てっきり「ナイフ」と「フォーク」に「肉厚ステーキ」、「スープ」に「パン」な人かと思っていた。
意外。
意外過ぎる。
そんな予想外の男は、「刺身とか好き。焼き魚もイイ。薄味な田舎料理も捨てがたいよネ」と言った。
HOW TO USE [01]
「ジョーカー?
ああ、あいつかなりの和食好きだぜ。
何か、小料理店の女将に料理を教わったりもしてたし」
「へえ、そうなんだ。
意外だよね」
ざわざわと賑やかな繁華街。
飛鳥は、今日も仲良くジャックと並んで買い物に来ていた。
それもこれも、今日がジョーカーの誕生日ゆえだ。
実は昨日、飛鳥はジョーカーに「和食」を、しかも「手料理を作れ」とせがまれていたのだ。
それに、しぶしぶではあるが、諾と返事をしてしまった飛鳥。
正直、自分でも「家庭科の成績、一」の腕前が不安ではあった。
だが、余りにしつこく言われ、仕様がなく了承してしまった。
まあ今となっては、後悔してもどうしようもない。
せめてもの救いというか、料理上手な人間が傍に居てくれた事をありがたく思う方が妥当だろう。
「って言っても、あいつほとんど自分で作らないけどな」
「何それ、意味ないじゃん」
「俺に言うなよ。
あ、それ。
そっちの人参の方がいいぜ。
これ、色がちょっと茶色くなってる」
母親宜しく、そうアドバイスしてくれる、この少年。
彼こそが、実は飛鳥達が住まう家の専らの料理役なのだ。
まだ幼いというのに、料理は決して苦手ではないらしい。
彼らの家に来たばかりだった頃の飛鳥は、それを聞いて別に彼の腕を疑った訳ではなかったが、実際に手料理を持て成して貰った時は、大層驚かされてしまった。
何ともこんな小さな身体で、どうしてこんなお袋の味というものを熟知しているのだろうか。
この子はスーパー小学生か。
否、本当は年をさばよんでいるのではないかと思った程である。
そんな彼が、まるで店に陳列している野菜全てを把握している様に、低い背をぴょこぴょこと跳ねさせて、自分では手が届かない場所にある野菜を指差した。
「二本入りの方が得みたいだ。
そっちにした方がいい」
それに、飛鳥は「はい」と素直に返事し、掴んで籠の中に入れる。
それを確認すると、ジャックは店の奥に引っ込んでいたおじさんに、「すみませーん、これだけ下さーい」と、やはり慣れた風で声を掛けた。
すると、間もなく奥から、「あいよー」と、調子のいい声が聞こえてきた。
TO
BE CONTINUED.
2004.10.23
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