このままもっと、貴女に罠を掛けてあげる。
片手に愛を、もう片方にはピストルを持って。
二度と離れられないように、俺との幸せしか見られないように。

ねえ、だから。
罠だと分かっていてもいいから。

お願い。
どうか、知らない振りして堕ちてきて。

俺だけの檻の中で、いつまでも小鳥のように鳴いていて。

THE CARD GAME
017/轍

銀髪の男ジョーカーは、角度を変えながら、飛鳥の急所を目掛けて激しく腰を叩きつけてきた。

ぐりぐりと内部を抉る音が、飛鳥の体内の奥で鳴る。
直接肉壁が何度も擦られているのが、顕著に分かる。

「あ、あっ」

窮屈な姿勢のまま、飛鳥の喉が反る。
男が突き上げる度に、飛鳥自身はびくびくと痙攣し、とろりとした淫汁さえ零れ落とす。

「可愛いヨ、アスカ。
ネ、後ろだけでイってみて。
イくまで突いてあげるカラ」

男は、飛鳥の耳を甘噛みしながら、わざと優しく息を吹きかけた。
それに、飛鳥が色好い反応をするものだから、男は益々激しくなる。
夢中になって、欲望を叩きつけてくる。

快感の余り、筋肉も皮膚も弛緩し、全ての毛穴が開いているような錯覚を覚えた。
全身には、多量の汗が滴り落ちている。

「う、ああっ」

暗い個室の中、汗で銀の髪をきらきらと輝かせながら、男は腰を反らせる。
下肢を飛鳥に強く押しつけ、熱い肉の塊を埋め込み続ける。

互いのはっはっと浅く乱れた呼吸が、刻一刻と熱くなっていく。

「ン、凄くイイ。
アスカ」
「あっ、ああ、ああっ」

叩き付けられる欲望に合わせて、飛鳥が鳴く。
男は、更に反応する。

滾りきった飛鳥の芯は、怒張したまま、どくどくと脈打つ拍動を見せた。
簡易のベッドは、ぎしぎしと辛そうな悲鳴を上げている。

けれど、ベッドが壊れる前に、己の体こそが崩壊しそうだった。
快感の余り、四肢がバラバラになってしまいそうだ。

それでも、お構い無しに男は己を捻じ込んでくる。

「ああ、ああ、あああああっ」

部屋の中に存在するのは、淫らなものばかり。

男が一際大きく腰を回して奥まで突き入れると、飛鳥はついに逐情した。
まるでゼリーを勢いよく飛ばしたように、精が宙目掛けて弾け飛んだ。

強い快感を持て余して、飛鳥は指先に力を込めるしかなかった。
食い込むように刺さった爪が、回していた男の背の肉をぐっと抉る。
それに、男は眉間に皺を寄せ、耐え堪えていた。

「あ、う、うううう」

唸るように声を漏らす。
勢いよく吐き出された飛鳥の白い粘液は、二人の腹にも、胸にも、シーツにも飛び散った。
その吐精後の余韻に震えながら、小さくなりつつも、未だびくびくと淫汁を吐き続ける、飛鳥の芯。

「アア、マダ出てんだネ」

思ってもみなかった悦ばしい痴態に、男は淫猥な笑みを浮かべて、舌なめずりをした。
男にとって飛鳥の身体は、食しても食しても、更に欲しくなる馳走なのかもしれない。

「最後まで搾り出してあげるヨ、アスカ」

男は、飛鳥の吐精に合わせて止めていた腰を、再びゆっくりと動かし始めた。

飛鳥の喉が、「ひっ」と風を吸ったように鳴った。
男の背に回していた指にも、再び力が入る。

「いや、クラウ、ン。
いや」
「だって、まだ出てるヨ。
全部出してご覧、手伝ってあげるカラ」

男は、飛鳥の足首を掴んで、己の下肢を思い切り叩きつけた。
熱に浮かされた腰を動かし、飛鳥の身体を何度も何度も揺らしてきた。

ある場所を狙ってぐりぐりと熱棒を押しつけられると、飛鳥の芯は蜜を垂らしながら、また少しずつ力を取り戻していく。
快楽の終末には、果てが無い。

「ホラ、まだイけるじゃない。
出てるの分かる?」
「や、やあ」

過度な快感に、飛鳥の半開きの目は、焦点を失いつつあった。
生理的な涙まで、目からぼろぼろと零れていった。
むしろ、全身からも何もかもが溢れて、滲み出ている感覚もあった。

「勃たなくなるまでしてアゲル」

甘い吐息と共に、甘美な声色。
男が腰を突き上げる度、半勃ちになった飛鳥の先端からは、びゅっびゅっと白い液体が噴き零れた。

甲高い喘ぎ声が、次第に悲鳴へと変わっていく。
迸る性的な感覚は、指先すらも痺れさせる。

それでも、男の攻めは、止まるところを知らない。

「もっと。
もっと出して御覧。
ほら、出るデショ」
「う、ああっ」
「ホラ、ホラ。
もっと一杯出して。
一杯感じてるとこ見せてヨ」

飛鳥は、脳みそまでぐちゃぐちゃに掻き回されているようだった。

淫らな水音が、始終辺りに谺している。
ぱんぱんと互いの肉を打つ音も、リズムを刻んでいる。

飛鳥の思考回路はついに崩壊寸前まで追い遣られ、全てが蜜色に染まっていった。
男も、厭らしい旋律に意識を持って行かれたのか、ただ獣のように飛鳥の身体に肉を押し付けている。

「あ、あ」

何度も何度も後ろを抉られ、もはや吐精したのかどうかも分からないまま次々と強烈な射精感に襲われ、飛鳥はいつまでも淫汁を流し続けた。
半開きの口からは、飲み込みきれなかった涎が伝っていた。

その涎を男が舌で掬い、上気した頬も舐め回してくる。

「愛してるヨ、アスカ」

然して会って間もない筈の飛鳥に、恋情の言葉を紡ぎ、男は猫のように擦り寄った。

「ずっと此処に居て。
こうやって、毎日俺が可愛がってアゲル。
だからもう帰らないで。
ネ?」

その体勢のまま、切なそうに懇願してくる男。

帰らない?
一体、何の話だろう。

ぼんやりした頭では相手が何を言っているのかも理解できないまま、だからと言って問い返す事も出来ず、飛鳥はただ首を縦に振る。

「約束ネ、アスカ」

男は、嬉しそうに破顔して、飛鳥の胸元に強く口付けてきた。
そして、そのまま強めに吸い上げて、己の瞳にも負けぬ真紅の痕を白肌に残した。

その所有の印に益々満足したらしい男は、今度は唇にも吸い付いてくる。

「約束」

無邪気に、同じ言葉で。
まるで、子供のような言い振りをする銀髪の男。

その台詞を朧げに聞いて、飛鳥はゆっくりと瞼を下ろしていった。

至極幸せそうな男の顔がぼやけていく。
終いには、真っ白で何も見えなくなる。
音も、一切耳に入らなくなった。
けれど、肌だけは微かに暖かい。

そのまま、飛鳥は完全に意識を手放した。
その様子を眺めていた男も、うっとりと目を細めた。

先程自分が残したばかりの赤い印に、そっと指を這わせる。
その胸元に残した己の想いが、その白い肌に染み込んで。
そして、いつかはその先にある飛鳥の心に届く事を願いながら、緩慢と目を閉じたのだった。





TO BE CONTINUED.


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