「んっ、む」

フィルター越しのような、幼いあの子の声。
艶を帯びた、厭らしい声。

「んあああっ」

少年を取り囲む、複数の男と女の身体をした、モノトーンの生物。
小さな少年自身は、厭らしい女の体内に飲み込まれ、空いている穴全てには禍々しい男の熱い塊をねじ込まれている。

「あ、あっ」

その両手両足ですら、行為の玩具として扱われ。
自由になっているところなど、何処にもない。

≪挿絵≫

けれど、そんな空間で、少年はただ悦に入った顔をしていた。

THE CARD GAME
016/CRAZY FOR YOU

「お帰り、早かったネ。
てっきり一緒に交じってくるかと思ってた」

銀髪の男ジョーカーは、呆然として戻って来た飛鳥を寝転んだまま眺め見、皮肉めいた言葉を掛けた。

当の飛鳥は顔面蒼白で、目元付近だけを赤くさせ、黙っていた。
言い返す元気がない。

その様子に、男は小さく歎息し、寝転がっていた半身を起こした。

「だから言ったデショ。
放っとけって」
「だって、ジャックが」

飛鳥は目を左右に泳がせながら、言葉を詰まらせた。
両目からは、再びぼろぼろと涙が零れた。
喉は、ひりひりと焼け付いている。
鼻の奥は、じんじんと痛んだ。

男は目を細め、飛鳥の腰を片手で抱き寄せ、自分にしなだれさせた。
鼻水で機能を果たさなくなった飛鳥の鼻には、先程のように、男の香水の香りが届かなかった。

「放っときなヨ、あんなの。
それよりもっと俺がイイ事してあげるカラ。
ネ?」

慰めるように言いながら、ぎしりと音をたて、男は飛鳥のこめかみに口付けた。
そして、両腕を掴み、シーツの上へと組み敷く。

視界がぐるりと変わった事にやや驚きつつも、飛鳥はたどたどしく彼の名を呼んだ。

「ジョー、カ」

舌がうまく回らず、呂律がおかしくなりそうだった。
その飛鳥の表情は、まだ幼い色が滲んでいるものの、男と女の両方を兼ね備えた、妖艶な色香も孕んでいる。
性転換が為された故の性質でもあるし、飛鳥本来の魅力でもあった。

それに魅了されたように、男はふっと唇で弧を描く。

「clownて呼んで、ネ。
そんなrank名じゃなくて、俺だけの呼び名を」

男は、飛鳥の服の中にするすると指を滑らせた。
その感覚に、飛鳥の背はびくりと撓った。
すると、その撓った背の下に出来た僅かな隙間に手を入れられ、軽く抱き締められた。

合わさった唇は柔かくて、ふわりとした感触だった。
甘やかな心地に、感覚に、飛鳥の目がうっとりと細められる。

飛鳥の表情に中てられて気分が昂ぶったらしい男も、自分自身を注ぎ込むように、多量の唾液を流れ込ませてきた。
どろりとした熱い液体が、飛鳥の口内に広がる。
それを、飛鳥は従順に嚥下した。

「もうアンタに狂っちゃってるカモ、俺」

己の唾液を全て飲み込んだ飛鳥を見て、男は自分を嘲るような笑みを零した。
決して悲しそうな笑みでは無い。
困っているけれど、何処か満足しているような、嬉しそうな笑みだった。

「クラウン」
「ン、何」

男は、飛鳥の頬を舐めながら、涙の跡を消していく。
けれど、手は一切休めずに、器用に服を脱がしていく。

余りに慣れた手つきなものだから、すぐに飛鳥は一糸纏わぬ姿にさせられた。
ほんの少し肌寒いような気がするが、火照り始めた体には丁度いいかもしれない。

男は再び目を嬉しそうに細めていた。
男の視界に映っているのは、飛鳥の裸体だ。
一度見たものと言えど、飽きるようなものでは無いらしい。
まるで好物をテーブルに並べられたかのように、喉をごくりと鳴らしている。

再び、唇を合わせた。
今度は舌も絡ませ、深く官能的なものだった。

飛鳥の脳内は、先程見た痴態に加え、眼前の男に酔わされて。
そのまま、憤りも、悲しみも、全て淫らなものに侵食されていった。

甘く痺れる四肢を男に絡め、繋がるのを待ちきれず、自分の肌を擦りつける。
飛鳥自身、自分でもこんなにも淫らな体がおかしかった。
けれど、本能には到底抗えきれそうもなかった。

「クラウン」

再度、男の名を呼んでみる。
その声は、消えそうな程に小さかった。
それでも、男はその声にも応えながら、飛鳥自身に手を伸ばしてきた。

其処はすでに濡れそぼり、熱く勃ち上がっていたらしい。
強く扱かれると、淫靡な水音が部屋中に響く。

飛鳥の全身に、抗いきれない強い快の電気が走った。

「ま、待って」

飛鳥は、慌てて手で制止した。
急に抵抗し始めた飛鳥に、男は不思議そうに首を傾げる。

「アスカ?」
「お願い。
このままイかせないで」
「このまま?」
「いいから、お願い。
何もしなくていいから、このまま挿れて。
全部、あんたを」

溜息混じりに、艶のある声で懇願する。
それに、男は「了解」とばかりに、溢れた蜜を指に纏わせ、飛鳥の後穴を弄り出した。

昨日まで貝のように閉じていた其処は、まるで砂糖菓子の如く、ずるりと男の指を咥え込む。
中は、熱くて蕩けそうになっている。

「アア、厭らしい身体」

男は、妖艶な笑みを浮かべた。
手首を回転させ、突っ込んだ指を更に奥へと埋め込むと、入り口が拡がっていく。
飛鳥の腰が、びくりと高く浮き上がる。
目には、また涙が浮かんできた。

その飛鳥の痴態に興奮したのか、男の全身も血走っていった。
荒く短い息は、すでにどちらともなく零れている。

「もうイイネ。
挿れるヨ、アスカ」

己の衣服を必要最低限剥ぎ取った男は、自分自身に先走りの汁をなすりつけ、ぐちゅりと飛鳥の中に押し入った。

熱棒を入れられて、飛鳥の全身を襲ったのは、得も言われぬ圧迫感と恍惚感だった。
ぎちぎちと、後口の入り口が締まる感覚がある。
けれど、その異物感がまた脳天を突き破るような快感を連れて来る。

飛鳥は、堪らず大きな悲鳴を上げた。

「あああああっ」

男は、飛鳥の腰を抱き寄せて、強く深く突き上げた。
ぐりぐりと中を抉るように、己をきつく押し付ける。

「気持ちイイ?
もしかして、jackの乱交でも見て煽られちゃったの?」
「あ、は」

意地悪く問うてくる男に、飛鳥は男の首に腕を絡め、貫かれながら身を捩った。
そして、自分でも浅ましくなる程に、淫らに腰を蠢かせた。

動かしたくて動かしている訳ではないのに、勝手に揺れてしまう、淫らな身体。
ただ己の快楽を求めて。
そして先程までの私憤を全て忘れる為に、夢中で快を貪った。

「そんなに腰振っちゃって。
自分でイイ所でも探してるの?」
「う、んん、あああっ」

乱れていく飛鳥に、男はわざと腰を浅く緩く動かした。
そのもどかしい動きに、飛鳥はぶんぶんと首を横に振る。

「アンタの事は俺の方が知ってるんだカラ。
自分でしないで、俺に頼んで御覧」
「あっ、クラ、ウン。
お、願い。
昨日のとこ、擦って。
一杯、突いてっ」

その欲に溺れた浅ましい言葉に、男は快く承諾する。

「O.K.」

額に軽く口付けられる。
その姿勢のまま、膝裏を押し、膝が胸に付く程きつく身体を折り曲げさせられる。

互いに深く繋がる感触がある。
ずぶり、ずぶりと、淫猥な音がする。

飛鳥は、目の前にばちばちと電気信号が走るのを感じながら、また一際大きな声を上げたのだった。





TO BE CONTINUED.


[Back]