マスター、申し訳ありません。
私達は皆、貴女の駒。
自ら意志を貫く事が出来ない、只のこの世界の駒なのです。
だから、どうぞ分かって下さい。
偉大なる我らが愛すべき御方。
言葉には出せなくとも、私はいつも貴女を想っています。
いつも貴女を感じています。
THE CARD GAME
007/結合
飛鳥の切なる言葉に、桃髪の少女クイーンは頑なに応えなかった。
ただ両目をぎゅっと瞑り、飛鳥の両肩に手を力無く掛け、時折漏れる甘い声をその場に零すだけだった。
「クイーン、あんたが好きだよ」
それでも、飛鳥は睦言と手管を止めようと思わなかった。
「精を吐き出したい」という感情が先を急がせているのも勿論あったが、それ以上に彼女が愛しかった。
頑固に横一文字に括られた彼女の唇さえも、愛らしく映っていた。
何もかも、どんな感覚も手触りも、恋しい少女が齎してくれるものだと思うだけで、酷く脳を酔わせる甘美なものへと変わっていく。
恋をすれば周りが見えなくなるというが、これが正にそれなのだろう。
寧ろ、今の飛鳥であれば、たとえ少女に拒まれ、犯す形になったとしても、都合よく彼女の態度を解釈してしまう可能性があった。
「気持ちいい?」
胸を撫でていた飛鳥の指先は、徐々に下方へと下りていく。
其処は、最初に触れたかった場所だった。
だが、変に遠慮が働いて、思い切って手が出せなかった場所でもあった。
其処へ少しずつ、本当に僅かずつだが、距離を縮めて進んでいく、浅ましい己の手。
やっとの思いで終着点へと到着した時には、禁じられた場所に足を踏み入れたような錯覚を覚え、爪先から下肢へと強い信号が流れ走った。
「クイーン、感じてくれてんだね」
少女の恥部が、女の箇所が、しっとりと潤って飛鳥を歓迎している。
少しだけ触れた指からでも分かる程、其処は夥しい汁を流していた。
たらたらと溢れ出るそれが、しなやかな内股を伝い、敷かれている布団にまで染みを作っている。
それがまた飛鳥の本能を激しく揺さぶり、拙い指を迷い無く奥へと進ませる。
「は、あっ」
溜息のような嬌声を漏らす、桃髪の少女。
彼女の汁はぬるりと滑り、これからの行為を存分に助けた。
飛鳥は爪を僅かにたて、少女の下肢の突起を摘んでは擦った。
それに反応するかの如く、飛鳥の下で横たわっている小さな身体は、かたかたと震えて官能に応えた。
どうやら此処が女の急所らしい。
そう飛鳥は察知し、執拗にその愛撫を繰り返した。
同時に耳も甘噛みした。
出来るものなら、彼女の全てを可愛がってやりたいと思った。
「マス、ター、あっ、いけませ、ん。
其処は…」
「好き。
好きなんだよ、クイーン。
ねえ、応えて。
好きって言ってみて」
恐らく快感からだろうが、組み敷いている彼女から漏れるのは、拒否の言葉だった。
それに飛鳥は気にしない素振りをするものの、やはり強要する言葉を吐いた。
それでも、少女は下唇を強く噛み締め、湧き出てくる喘ぎ以外の言葉を断固として言わない。
飛鳥は、もどかしい想いで胸が一杯になった。
どうしてこの子は自分の気持ちに応えてくれない?
好きな素振りを見せておいて、己になら何をされてもいいと言っておいて、どうして肝心な言葉を言ってくれない?
飛鳥は、何とも言えない焦燥感に吐き気がした。
じりじりと胸を炙る、気持ち悪くてじれったい、まるで蛞蝓が身体を這っているような感覚があった。
本能はその不快な苛立ちから解放されたいと、何度も叫ぶ。
そのせいで、じわりじわりと、けれど当たり前のように、一つの打開策へと辿り付く。
繋がってしまえば、この憤りは全てなくなるだろうか?
自分の想いに応えてくれるだろうか?
一度でも浅はかな想いが浮かんでしまうと、次の瞬間には身体が行動に移っていた。
一方通行な想いに、すでに我慢がならなかったのだ。
少女の両足を高く持ち上げ、自分の肩に乗せる。
そのまま軽く己の身体を押し付ける。
少女の隠れていた部分も、自然、大きく開かれた。
艶々と光る汁を纏った綺麗な凹凸が、飛鳥の前に現れた。
「恥ずかしいです、マスター」
飛鳥の苛立ちなど露知らず、少女は顔を一層紅潮させて言った。
飛鳥は、それに負けない程の美しい彼女の恥部に見惚れ、思わず凝視してしまった。
喉がごくりと鳴った。
眼球の奥に、ぐっと力が入るのも分かった。
勿論、下肢に一層昂ぶりが走るのは、いの一番に分かってしまった。
飛鳥は、余りに興奮している己に、自嘲染みた笑みを零した。
そして、その自分の芯ある部分を、少女の腰に擦り付けた。
こり、と硬い自身が彼女に触れれば、恥ずかしいという想いも消えていた。
「こんなにもなってるんだ、私の。
クイーンにも分かる?」
問えば、少女は耳まで赤くして、恥ずかしそうに目線を下方へずらした。
そして、ゆっくりだが首を縦に振った。
その小さな所作すらも飛鳥自身を煽り、脈拍数を上げていく。
「ね。
もう、いいかな?
余り時間かけてあげられなかったけど、私、あんたと早く繋がりたいんだ」
「マスター」
「お願い、もう待てない。
何か、身体が熱いんだ」
そこまで言って、飛鳥は相手の返事を待たずして、先端を内部へと埋め込んだ。
ぬちゃっという厭らしい音と共に、少女の身体が一瞬にして強張る。
しんなりとしていた背も、びくりと弓なりに浮いた。
それを少しでも弛緩させるため、飛鳥は背に手を潜り込ませ、ゆっくりと優しく撫でてやる。
そして、そのままゆるゆると腰を動しながら、奥深くへと己を沈めていった。
「あっ」
「熱い。
あんたの中も熱いよ」
想像していたよりも、凄く気持ちがいい。
これだけで十分達せる。
蕩けるような熱に一人悦に入っていると、眼前には、段々と力も抜け、けれども奥まで届かないもどかしさに眉間を寄せる少女が居た。
その表情が余りに可愛らしかったので、飛鳥は大きく息を吸って、思い切り中へと己を打ち付けた。
「やっ」
急に来た大きな快感に、少女は再び背を弓なりにさせた。
密着した二人の身体の間には、はっはっという浅い息が谺した。
けれども、がくがくと震える少女の腰を強く抱き締めて、飛鳥は動きを加速させた。
それについてこられないのか、少女は悦と苦痛の入り混じった表情を浮かべ、飛鳥の肩に爪を立てた。
その痛みが、二人の繋がりを身をもって実感させ、益々飛鳥の質量を増させていく。
「あ、あっ。
や、あっ、マス…っ」
「クイーン。
凄い、凄い気持ちいいよ」
体内で衰えるどころか、段々と角度を上げる異物に、少女は堪らず全身でしがみ付いてきた。
その小さな身体をきつく抱き、更なる高みへと目指し、ぐちゅぐちゅという卑猥な音を激しく部屋中に響かせる。
甘酸っぱい香りも、もう香には負けない程に部屋の中に充満していた。
そのまま、耳も、目も、鼻も、肌も、飛鳥の使える感覚器官のほとんどが、溺れる程の快感に侵されていく。
愛する人と繋がる。
それがこんなにも幸せで、気持ち良かっただなんて。
飛鳥は、夢中になってただ腰を振った。
何度も出たり入れたりしている間に、一定のリズムが二人に刻まれた。
けれどそれとは相反して、不安定で強く締め付ける少女の内部と、それに応えようとする飛鳥自身があった。
「あっ、あっ、もう…っ」
ぐっぐっと波打つ少女の肉壁の圧力は、段々強くなっていく。
「マスター、マスター。
マス、ター」
二度、三度と少女が飛鳥を呼ぶ。
その後、一層締めあげてきた内面に、飛鳥はたまらず白濁色の汁を吐き出した。
少女のびくんと波打つ壁を、一番敏感な部分で感じ取る。
それすらも、飛鳥にとっては痺れる程の快だった。
少女は、朦朧とした意識で、だらりと腕を布団へ投げ出した。
≪挿絵≫
「はっ。
クイー、ン」
飛鳥は、荒い息をしていたせいか、少し枯れてしまった喉で、目の前に居る美しい少女の名を呼んでみた。
「クイーン。
私の事、好きだよね?」
そして、先程の睦言などを問いながら、愛おしげに髪を撫でてやった。
少女の長い髪は、汗ばんだ手にぺたぺたとしつこく絡みつく。
「クイーン」
けれど、やはり彼女からの返事は返って来なかった。
只あるのは、物憂げな眼差しと、整わない呼吸音のみ。
そして、互いの身体にだらだらと垂れる、濫りがわしい汗だけだった。
TO BE
CONTINUED.
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